出典:青空文庫
・・・そろそろいい時分だ、なんて書くと甚だ気障な空漠たる美辞麗句みたいになってつまらないが、実朝を書きたいというのは、たしかに私の少年の頃からの念願であったようで、その日頃の願いが、いまどうやら叶いそうになって来たのだから、私もなかなか仕合せな男・・・ 太宰治 「鉄面皮」
・・・万引にも三分の理、変質の左翼少女滔々と美辞麗句、という見出しでございました。恥辱は、それだけでございませんでした。近所の人たちは、うろうろ私の家のまわりを歩いて、私もはじめは、それがなんの意味かわかりませんでしたが、みんな私の様を覗きに来て・・・ 太宰治 「燈籠」
・・・それだから「今の文章はいにしえのような美辞麗句でなく」「作家の表現しようと考える対象の性質から規定されて来る。」ところで、この著者の理解によると現代の作家は「社会の人々が普通にはもっていないような感情、又は持っていても表現して見せる必要のな・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・エンボイにはどんな無電設備があったか、遭難後の状況で、その設備の有無が認め得たか得なかったか。美辞麗句の哀悼の詞より、死者を瞑せしめるのは、偽りないその点への科学的な追究の態度であったろうと思う。 この感想を私は或る新聞の短文にかいたら・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」