出典:青空文庫
・・・ 少なくも、自分の場合には、いつもただその時に思ったことをその通りに書いてゆくだけであるから、色々間違ったことを書いたり、また前に書いたことと自家撞着するように見えることを平気で書いたりしている場合がずいぶん多いことであろうと思われる。・・・ 寺田寅彦 「随筆難」
・・・又この事実は、ビジテリアンたちの主張が、畢竟自家撞着に終ることを示す。則ちビジテリアンは動物を愛するが故に動物を食べないのであろう。何が故にその為に食物を得ないで死亡する、十億の人類を見殺しにするのであるか。人類も又動物ではないか。」・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ダラディエの属していた急進社会党とレイノーの属していた中央共和派とは、フランスの社会生活全般に対してどんな見解の相異をもっていたかということや、ダラディエ一人の中にどんな自家撞着があり、更にどんな利害の対立をもっていたかということについて、・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・親切に作られたものであるという説明を、或るときは優しい愛撫とともに、或るときは激しい威嚇を伴って繰返し繰返しとかれたにも拘らず、彼女はその言葉、その態度、その理由のうちに、服従することの出来ない多くの自家撞着を発見した。 どう考えても、・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・最後の特徴を中国民族の性格のうちにある自家撞着と見るところは、これ又何とバック夫人の見解と似ていることだろう。作者たちが、そこでめいめいの半生を費しているにもかかわらず、中国の人民というものの理解に絡みつかせているこの自家撞着は、二人の作家・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」