出典:青空文庫
・・・これ一つを見ても、日本の政府は自分達の利益を守ろうとして戦争を強行して行くためには、人民一般の生活に対してどんなに無責任であり、どんなに破壊的で、自暴自棄な方向を取っていたかということが明瞭である。統計一つさえもなくて、どうしてこれ程厖大な・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・一つとして、疲労で蒼ざめ形のくずれていない顔はないのに、気が立っている故か、自暴自棄の故か、此方の列車とすれ違うと、彼等は、声を揃えてわーっと熾んな鯨波をあげる。気の毒で、此方から応える声は一つもしなかった。 けれども、家の安否を気遣う・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
・・・すでにこれまでにも彼を圧迫する事によって彼の自暴自棄を手伝ったのは、私であったかも知れません。私もまた彼の頽廃について責めを負うべき位置にあるのです。ことに私は彼のためにどれだけ物的の犠牲を払ってやりましたか。物的価値に執する彼の態度への悪・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
・・・、その中から自暴自棄的な行動をとるものも出て来たのである。しかし聖勅に違背するような不忠な政治家を誰が作ったであろうか。たといそういう政治家が官僚の中から出たとしても、すでに議会が開けた以上は、代議士さえ聖旨にかなうような人であれば、そうい・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」