出典:青空文庫
・・・人事の失望は十に八、九、弟は兄の勝手に外出するを羨み、兄は親爺の勝手に物を買うを羨み、親爺はまた隣翁の富貴自在なるを羨むといえども、この弟が兄の年齢となり、兄が父となり、親爺が隣家の富を得るも、決して自由自在なるに非ず、案に相違の不都合ある・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・の為めに配偶者を求むるは至極の便利にして、其間に本人の自由を妨ぐることなきに似たれども、今一歩を進むれば社会全体に男女交際法の区域を広くし、之を高尚にし、之を優美にし、所謂和して乱れざるの佳境に進めて自由自在ならしめんこと、我輩の常に願う所・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・学育もとより軽々看過すべからずといえども、古今の教育家が漫に多を予期して、あるいは人の子を学校に入れてこれを育すれば、自由自在に期するところの人物を陶冶し出だすべしと思うが如きは、妄想のはなはなだしきものにして、その妄漫なるは、空気・太陽・・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・父子・君臣・夫婦・朋友、たがいに相妨げずして、おのおのその持前の心を自由自在に行われしめ、我が心をもって他人の身体を制せず、おのおのその一身の独立をなさしむるときは、人の天然持前の性は正しきゆえ、悪しき方へは赴かざるものなり。 もし心得・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・には、男女両性の間は肉交のみにあらず、別に情交の大切なるものあれば、両性の交際自由自在なるべき道理を陳べたるに、世上に反対論も少なくして鄙見の行われたるは、記者の喜ぶ所なれども、右の「婦人論」なり、また「交際論」なり、いずれも婦人の方を本に・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・それらの少女達はジャケツにお下げぐらいの簡単な服装をして居りますから体のこなしが如何にも自由自在で、軽やかです。そして心からニコニコしているらしく、頬にも瞳にも愛嬌がこぼれております。 この少女達は家庭に居っても割合に我儘に育って居・・・ 宮本百合子 「わたくしの大好きなアメリカの少女」
・・・これほど自由自在に、また微妙に、心の陰影を現わし得る顔面は、自然の顔面には存しない。そうしてこの表情の自由さは、能面が何らの人らしい表情をも固定的に現わしていないということに基づくのである。笑っている伎楽面は泣くことはできない。しかし死相を・・・ 和辻哲郎 「面とペルソナ」