《「たまう」あるいは「たぶ」の音変化で、主として平安時代に用いた》
[動バ四]
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1 「与える」「授ける」の意の尊敬語。上の人から下の人へ与える。お与えになる。くださる。「たまう」よりも与える相手を低める気持ちが強い。
「それは隆円に—・べ」〈能因本枕・九七〉
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2 尊者に対する会話などで自己側の動作に用い、第三者にくれてやりますの意を表す。
「越の国へまかりける人に酒—・びけるついでに」〈後撰・離別・詞書〉
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3 動詞の連用形に付いて、その動作の主を尊敬する意を表す。…なさる。「たまう」よりも敬意は低い。
「御館より出で—・びし日より」〈土佐〉
[動バ下二]
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1 「食う」「飲む」の意の謙譲語。飲食物を上位者からいただく。たべる。
「大御酒 (おほみき) など—・べて」〈古今・離別・詞書〉
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2 話し相手に対し、自己の飲食する意を、へりくだりあるいは丁寧にいう。たべる。
「この酒をひとり—・べんがさうざうしければ」〈徒然・二一五〉