いちぎゅうめいち【一牛鳴地】
一頭の牛の鳴く声が聞こえる土地の意から、非常に近い距離のたとえ。また、のどかな田園風景の表現。
かちょうふうえい【花鳥諷詠】
四季の移り変わりによる自然界や人間界のあらゆる現象を、そのまま客観的にうたうべきであるとする俳句理念。▽高浜虚子たかはまきょしが提唱し、ホトトギス派の基本理念となった。「花鳥」は自然のたとえ。「諷詠」は詩歌をうたい作ること。
かんざんじっとく【寒山拾得】
中国唐代中期の寒山と拾得の二人の高僧。二人とも奇行が多く、詩人としても有名だが、その実在すら疑われることもある。拾得は天台山国清寺こくせいじの食事係をしていたが、近くの寒巌かんがんに隠れ住み乞食こじきのような格好をした寒山と仲がよく、寺の残飯をとっておいては寒山に持たせてやったという。また、この二人は文殊菩薩もんじゅぼさつ、普賢ふげん菩薩の生まれ変わりといわれる。画題としてもよく用いられる。
きじせんもく【貴耳賤目】
伝聞やうわさを軽々と信じて、実際に自分の目で見ているものを信じないこと。また、伝え聞いた遠くのことや過去のことは重んじるが、身近なことや現在のことは軽視すること。耳で伝え聞いたことは尊ぶが、実際に目で見たものは軽んじる意から。▽「賤」はいやしみ軽んじる意。「耳みみを貴とうとび目めを賤いやしむ」と訓読する。
きょじつひまく【虚実皮膜】
芸は実と虚の境の微妙なところにあること。事実と虚構との微妙な境界に芸術の真実があるとする論。江戸時代、近松門左衛門ちかまつもんざえもんが唱えたとされる芸術論。▽「虚実」はうそとまこと。虚構と事実。「皮膜」は皮膚と粘膜。転じて、区別できないほどの微妙な違いのたとえ。「膜」は「にく」とも読む。
きんじょがっぺき【近所合壁】
近くの家々のこと。隣近所。▽「合壁」は壁一枚を隔てた隣のこと。
くぶくりん【九分九厘】
ほとんど完全に近いこと。ほとんど間違いなく確実なこと。推測・予想などがほぼ確実であること。十分のうち一厘を残すだけの意から。
くんそくのあく【君側之悪】
君主のそばにいる悪人のこと。また、ひそかに悪だくみを考えている側近の臣下。
げんぶんいっち【言文一致】
日常用いている話し言葉によって文章を書くこと。また、特に明治時代を中心に行われた文体の改革運動をいう。明治初期に文学界では二葉亭四迷ふたばていしめい、山田美妙やまだびみょう、尾崎紅葉らが小説に試み、明治末期以降に確立した。▽「言文」は話し言葉と書き言葉。口語と文語の意。
ここうのしん【股肱之臣】
主君の手足となって働く忠実な家来のこと。また、いつも身近にいて信頼できる腹心の部下のこと。