うむそうせい【有無相生】
有と無は、有があってこそ無があり、無があってこそ有があるという相対的な関係で存在すること。また、この世のものはすべて相対的な関係にあること。▽「相生」は互いに生じ合うこと。もとは、人間の価値観は要するに相対的なものであって絶対的なものではないのに、それを絶対的なものと錯覚して、万物を勝手に歪曲わいきょくして秩序立てている人間の愚かさと危うさを警告した『老子』の中の語。「有無うむ相生あいしょうず」と訓読する。
がくちりこう【学知利行】
人が踏み行うべき人倫の道を後天的に学んで理解し、その正しさを知り認めて、初めて実践すること。人が踏み行うべき人倫の道を認識し、実践していく三つの道程、すなわち、生まれつき先天的にそれをもっている完全な道徳的人間の「生知安行」、生まれつきにはもっていないが、後天的にそれを認識し学んで正しいと知り、初めて実践する「学知利行」、生まれつき聡明そうめいでなく、発憤して心を苦しめ、やっとのことでそれを認識し、一心に努力を重ねて実践する「困知勉行こんちべんこう」のうちの一つ。▽「学知」は人倫の道を先天的でなく学んで知ること。「利行」はよい、また役に立つと認めて実践すること。
くうそくぜしき【空即是色】
固定的な実体がなく空くうであることで、はじめて現象界の万物が成立するということ。万物の真の姿は実体がなく空だが、その空は一方的にすべてを否定する虚無ではなく、それがそのままこの世に存在する物の姿でもある意。▽仏教語。「空」は固定的な実体のないこと。「色」はいろ、かたちあるもの。この世のすべての物質的存在のこと。
しゅかくてんとう【主客転倒】
主な物事と従属的な物事が逆の扱いを受けること。物事の順序や立場などが逆転すること。▽「主客」は主人と客人。転じて、重要なことがらと、付けたり、従属的なことがらのこと。「客」は「きゃく」とも読む。また、「転」は「顛」とも書く。
しゅんじゅうのひっぽう【春秋筆法】
間接的な原因を、あたかも直接的な原因として表現することで、真理をつく方法。間接的な原因や結果も踏まえて批判すること。また、厳しく公正な態度で、鋭い批判を繰り広げること。
しりしよく【私利私欲】
自分の利益や、自分の欲求を満たすことだけを考えて行動すること。私的な利益と私的な欲望の意。▽「欲」は「慾」とも書く。
じんいとうた【人為淘汰】
人工的に生物の品種改良を行い、その形質を一定の方向に変化させ、目的にかなった型の固体だけを選び残していくこと。▽「人為」は自然のままでなく、人間の手を加えること。「淘汰」はより分ける、よいものを取り、悪いものを捨てること。
そくてんきょし【則天去私】
小さな私にとらわれず、身を天地自然にゆだねて生きて行くこと。▽「則天」は天地自然の法則や普遍的な妥当性に従うこと。「去私」は私心を捨て去ること。夏目漱石そうせきが晩年に理想とした境地を表した言葉で、宗教的な悟りを意味するとも、漱石の文学観とも解されている。「天てんに則のっとり私わたくしを去さる」と訓読する。
ほんまつてんとう【本末転倒】
物事の根本的なことと、そうでないこととを取り違えること。▽「本末」は根本的なことと枝葉のこと。「転倒」はひっくり返すこと。「転」は「顛」とも書く。
りょうちりょうのう【良知良能】
人間が先天的にもっている知恵と才能のこと。後天的に獲得する学問や経験によるものではなく、人が生まれながらにもっている正しい心の働きと能力のこと。子が親を敬愛することの類たぐいをいう。▽孟子もうしの性善説せいぜんせつ(人間は本来、善良な生き物である、というもの)に基づく考え方。