あくはつとほ【握髪吐哺】
立派な人材を求めるのに熱心なこと。▽「握髪」は髪を洗っている途中で、髪を握って洗うのをやめること。「吐哺」は口中の食べ物を吐き出すこと。「髪かみを握にぎり哺ほを吐はく」と訓読する。「吐哺握髪とほあくはつ」ともいい、略して「吐握」ともいう。
あんしんりつめい【安心立命】
心を安らかにして身を天命にまかせ、どんなときにも動揺しないこと。人力のすべてを尽くして身を天命にまかせ、いかなるときも他のものに心を動かさないこと。▽初め儒学の語であった。仏教語では「あんじんりゅうめい」「あんじんりゅうみょう」と読む。「心」は「身」とも書く。また「立命安心りつめいあんしん」ともいう。
いちがつさんしゅう【一月三舟】
仏道は一つであるのに、衆生しゅじょうの受け止め方で、種々の意味に解釈されるたとえ。止まっている舟から見る月は動かず、南へ行く舟から見る月は南に動き、北へ行く舟から見る月は北へ動くように見えるということ。▽「月」は「げつ」とも読む。
いちごいちえ【一期一会】
一生に一度だけの機会。生涯に一度限りであること。生涯に一回しかないと考えて、そのことに専念する意。もと茶道の心得を表した語で、どの茶会でも一生に一度のものと心得て、主客ともに誠意を尽くすべきことをいう。▽千利休の弟子宗二の『山上宗二記やまのうえそうじき』に「一期に一度の会」とあるのによる。「一期」は仏教語で、人が生まれてから死ぬまでの間の意。
いちようちしゅう【一葉知秋】
わずかな前兆や現象から、事の大勢や本質、また、物事の衰亡を察知すること。一枚の葉が落ちたのを見て、秋が来たことに気づく意から。▽「一葉」は一枚の葉、一枚の葉が落ちること。「知秋」は秋の来たのに気づく意。一般に「一葉いちよう秋あきを知しる」と訓読を用いる。
いっしょうさんたん【一唱三嘆】
一度うたう間に何度も感嘆する意から、優れた詩文をほめたたえていうことば。
いっしんふらん【一心不乱】
何か一つのことに心を集中して、他のことに心を奪われないさま。一つのことに熱中して、他のものに注意をそらさないさま。
いどくせいどく【以毒制毒】
悪事を滅ぼすのに悪事を利用すること。また、病気を治すのに毒薬を用いること。
いんきょうじゅうねん【韻鏡十年】
理解することが、きわめて難しいこと。『韻鏡』が難解で理解するのに十年はかかる意から。▽『韻鏡』は、唐末の漢字の音韻を研究し図示した書。鎌倉時代に伝わり、江戸時代になって漢字音研究に利用された。
うむそうせい【有無相生】
有と無は、有があってこそ無があり、無があってこそ有があるという相対的な関係で存在すること。また、この世のものはすべて相対的な関係にあること。▽「相生」は互いに生じ合うこと。もとは、人間の価値観は要するに相対的なものであって絶対的なものではないのに、それを絶対的なものと錯覚して、万物を勝手に歪曲わいきょくして秩序立てている人間の愚かさと危うさを警告した『老子』の中の語。「有無うむ相生あいしょうず」と訓読する。