あくぼくとうせん【悪木盗泉】
たとえ困窮しても、わずかな悪事にも身を近づけないたとえ。悪事に染まるのを戒める語。また、悪事に染まること。▽「悪木」は役に立たない木。また、人を傷つけたり悪臭のある木。「盗泉」は孔子がそこを通ったとき、のどが渇いていたが、その名が悪いといって飲まなかったといわれる泉の名。悪い木の陰で休んだり、悪泉の水を飲んだりしただけでも身が汚れるという意。「盗泉」の説話は『尸子しし』下に見える。
えんすいきんか【遠水近火】
遠くにある水は近くの火事を消すには役に立たない意から、遠くにあるものは緊急の用事には役立たないということ。また、緩慢な応対では緊急の事態を解決できないことのたとえ。
えんとういっかつ【鉛刀一割】
鉛でできた切れ味の悪い刀でも、一度は物を断ち切ることができる意から、凡庸な人でも時には力を発揮できるときがあるたとえ。多くは自分の微力を謙遜けんそんしていう語。また、一度用いると二度と使えないことから、一度しか使えず二度と役に立たないことのたとえ。
かけいやぼく【家鶏野鶩】
古いものを嫌い遠ざけて、珍しく新しいものを好むたとえ。また、身近なものや良いものを嫌い、遠くにあるものや悪いものを好むたとえ。また、良い筆跡と悪い筆跡のたとえ。家に飼っているにわとりを嫌って、野生のあひるを好む意。▽「野鶩」は野生のあひる。「家鶏」は身近なもの、良いもの、古いもののたとえ。「野鶩」は遠くのよそにあるもの、悪いもの、新しいもののたとえ。「家鶏を厭いとい(賤いやしみ)、野鶩を愛す」の略。また「野鶩」は「野雉やち」(野生のきじ)ともいう。
かろとうせん【夏炉冬扇】
時期はずれの無駄なもののたとえ。また、無用なもの、役に立たない言論や才能などのたとえ。夏の囲炉裏いろりと冬の扇うちわの意から。▽君主の信望・寵愛ちょうあいを失った者や、寵愛を失った宮女、恋人にすてられた女性のたとえとして用いられることもある。「冬扇夏炉とうせんかろ」ともいう。
きじょうのくうろん【机上空論】
頭で考えただけで、理屈は通っているが実際にはまったく役に立たない議論や計画のこと。
きゅうぼくふんしょう【朽木糞牆】
怠け者のたとえ。手の施しようのないものや、役に立たない無用なもののたとえ。また、腐った木には彫刻できないし、腐りくずれた土塀は上塗りができないように、怠け者は教育しがたいことのたとえ。▽「朽木」は腐った木。「糞牆」は腐ってぼろぼろになった土塀の意。
ぎゅうしゅうばぼつ【牛溲馬勃】
つまらないものや、役に立たない無用なもののたとえ。「牛溲」は牛の小便。「馬勃」は馬のくそ。一説に「牛溲」は下等な薬草のおおばこ。利尿作用があるという。「馬勃」は腐った木などに生えるきのこの類のほこりだけ。できものに効くといわれる。いずれも些細ささいなものであるからいう。「溲」は「そう」とも読む。また、「勃」は「渤」とも書く。
くうりくうろん【空理空論】
実際からかけ離れている役に立たない考えや理論。▽「空理」「空論」はともに、実状や現実を考えない役に立たない理論や議論。ほぼ同意の熟語を重ねて意味を強めた語。
しゅんあしゅうぜん【春蛙秋蝉】
うるさいだけで、役に立たない無用な言論のたとえ。やかましく鳴く春のかえると秋のせみの意から。