ぼんのうぼだい【煩悩菩提】
悟りの障害となる人間の迷いの煩悩も、そのまま悟りにつながるきっかけとなること。悟りも悟りの実現を妨げる煩悩も、永久不変の真如しんにょの現れであり、人間の本性であるから、本来別のものでなく、二つは一体であるということ。また、迷いがあって初めて悟りもあるという意。▽大乗仏教の言葉。「煩悩」は心身を悩ます欲情の心の働きの意。「菩提」は一切の迷いのない悟りに至る境地の意。「煩悩即そく菩提」の略。
むいしぜん【無為自然】
人の手を加えないで、何もせずあるがままにまかせること。▽老子や荘子そうしの思想を指す言葉。「無為」は何もせず、人の手を加えないこと。「自然」は人間の手が加わっていないもともとの姿の意。あるがまま。
むじゅんどうちゃく【矛盾撞着】
二つの事柄が論理的に食い違って、つじつまが合わないこと。▽「矛盾」は同一人物の言動が一貫していないこと。食い違っていること。「撞着」も「矛盾」と同義。「盾」は「楯」、「着」は「著」とも書く。「矛盾」については「中国戦国時代、楚そ国で矛ほこと盾たてを売っていた商人が、矛を売るときには、この矛はどんな堅固な盾も突き破るほど鋭いと言い、盾を売るときにはこの盾はどんな鋭利な矛でも破れないと言ったところ、聞いていた人に、それではその矛でその盾を突いたらいったいどうなるのかと聞かれ、商人は返答に困った」という故事(『韓非子かんぴし』難なん一)がある。
むりおうじょう【無理往生】
無理に自分の言動を押しつけ、承知させること。▽「無理」は強引に物事を行うこと。「往生」は、本来は「圧状」と書く。「圧状」は人を脅して、むりやり書かせた文書のこと。
めんりほうしん【綿裏包針】
表面は柔和で穏やかに見えるが、内心はひそかに悪意をもっていることのたとえ。綿の中に針を包み隠している意から。▽「裏」は内側・中の意。「包針」は針を包み隠す意。「針」は言動の中にある、人の心を傷つける気持ち。害意。「綿裏めんりに針はりを包つつむ」と訓読する。
もうひょうたざい【妄評多罪】
でたらめで無遠慮な批評をしたことを、深くわびること。他人の文章などへの批評のあとに書く謙譲語。▽「妄評」はいい加減な批評。「多罪」は無礼などを謝る手紙文の言葉。「妄」は「ぼう」とも読む。
もんどうむよう【問答無用】
話し合っても無意味なさま。これ以上話し合いを続けても無駄なため、議論を終わらせる場合などに使う言葉。▽「無用」は用のないさま。役に立たないさま。
ゆいがどくそん【唯我独尊】
この世で、自分ほど偉いものはいないとうぬぼれること。釈迦しゃかが生まれたときに七歩歩き、一方で天を指し、他方で地を指して唱えたという言葉と伝えられる。この世の中で自分より尊いものはいないという意味。▽「天上天下てんげ唯我独尊」の略。「唯我」はただ自分のみということ。「独尊」は自分だけが一人尊いということ。
ゆうけんぐんばい【邑犬群吠】
小人しょうじんがこぞって集まり、人のうわさなどを盛んに言い合うことの形容。また、小人が多く賢人を非難するたとえ。村里にすむ犬が群がって吠ほえるという意から。▽「邑」は村里のこと。「群吠」は群がって吠える意。「吠」は「べい」とも読む。
よいんじょうじょう【余韻嫋嫋】
音が鳴りやんでも、なお、かすかに残る響き。また、その音が細く長く続く様子。詩や文章の言外の趣や、事が終わったあとの情緒あふれる風情にもたとえる。▽「嫋嫋」は音声の細く長く続くさま。「韻」は「音」とも書く。