[助動][ざら|ざり|○|ざる|ざれ|ざれ]活用語の未然形に付き、断定的な否定判断を表す。ない。ぬ。→
ざり →
ぬ- 「あらたまの年の緒長く逢はざれど異 (け) しき心を我が思 (も) はなくに」〈万・三七七五〉
[補説]「ず」の
活用は「ず」の
系列「(ず)・ず・ず・〇・〇・〇」と、「ぬ」の
系列「(な)・(に)・〇・ぬ・ね・〇」とからなるが、さらにその
不備を補うため、連用形「ず」に
動詞「あり」の付いた「ずあり」の音変化形「ざり」
系列「ざら・ざり・〇・ざる・ざれ・ざれ」が生じた。未然形「な」と連用形「に」は奈良時代に用いられたが、「ず」は、この「に」に
動詞「す」が付いて
成立したものという。「な」は、接尾語「く」の付いた「なく」の形で後世にも用いられた。また、中世以降、終止形は「ず」に代わり「ぬ」が用いられるようになり、未然形「ず」は室町時代以降「ずば」の形で用いられた。なお、
現代では、連用形「ず」は中止法として主に書き言葉で用いられ、終止形は「べからず」の形で
禁止の意を表すのに用いられる。