1 ナデシコ科の多年草。山野に自生し、高さ約50センチ。葉は線形で白色を帯び、対生。夏から秋、淡紅色の花を開き、花びらの先は細く裂けている。秋の七草の一。とこなつ。かわらなでしこ。やまとなでしこ。《季 夏》「―や片陰できし夕薬師/一茶」
2 襲 (かさね) の色目の名。表は紅梅、裏は青。一説に、表裏ともに紅色という。夏に用いる。なでしこがさね。
3 紋所の名。ナデシコの花と葉を取り合わせて図案化したもの。
5 なでるようにかわいがっている子。いとしい子。愛児。歌などで、植物の「ナデシコ」と「撫でし子」を掛け詞にしていうことが多い。
「忘れ形見の―の、花やかなるべき身なれども」〈謡・生田敦盛〉
出典:青空文庫
・・・病室の外には姫百合や撫子が五六本、洗面器の水に浸されていた。病室・・・ 芥川竜之介「子供の病気」
・・・々しい窶れが見えて、撫子を散らしためりんすの帯さえ、派手な紺絣の・・・ 芥川竜之介「妖婆」
・・・……「愛想のなさよ。撫子も、百合も、あるけれど、活きた花を手折ろ・・・ 泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」