いちぼくなんし【一木難支】
ひとたび崩壊しかかると、一人の力ではどうすることもできないということ。▽「一木、大廈たいかの崩くずるるを支ささうる能あたわず」が常用句。「大廈」は大きな建物。大きな建物が崩れるときは、もはや一本の柱では支えられない、という意。「一木いちぼく支ささえ難がたし」と訓読する。
いちまいかんばん【一枚看板】
一座の代表的な役者のこと。また、多くの人の中で中心となる人物のこと。また昔、武家で中間ちゅうげんや小者に支給された着物を「かんばん」と呼んだことから、一着しかない衣服、人に見せられるような着替えのないこと。▽「一枚看板」は、歌舞伎かぶきで、出し物の演目(外題げだい)や主な役者の名や絵姿を、一枚の看板に書いて、劇場の前に掲げたことから出た語で、一枚の看板に名前ののるほどの役者の意から転じた。
いちみととう【一味徒党】
同じ志や目的をもって仲間になること。また、その仲間。▽「一味」はほかの味を交えない一つの味の意から、平等・同一の意。また、志を同じくするという意から、仲間・同志をいう。「徒党」は事をもくろむために集まった仲間。悪い仲間をいうことが多い。
いちみどうしん【一味同心】
同じ目的をもって集まり、心を一つにすること。また、その仲間。▽「一味」はほかの味を交えない一つの味の意から、平等・同一の意。また、志を同じくするという意から、仲間・同志をいう。「同心」は志を同じくすること。また、その人々。
いちもうだじん【一網打尽】
ひと網であたりのすべての魚や鳥獣などを捕らえること。転じて、犯人などをひとまとめに捕らえること。▽『呂氏春秋りょししゅんじゅう』異用いようにある、四面に網を張り、四方からの獲物をすべて捕らえようと祈っている呪師じゅしの故事を踏まえたものか。「打尽」はここでは捕り尽くす意。「打」は動詞の上につけて動作を表す助字。「…する」の意。
いちもうふばつ【一毛不抜】
非常に物惜しみすること。非常にけちな人、利己的な人のたとえ。自分の毛一本も抜こうとしない意から。▽「一毛」は一本の毛。ごくわずかなもののたとえ。「一毛いちもうも抜ぬかず」と訓読する。
いちもくじゅうぎょう【一目十行】
書物などを速く読む力がすぐれていることのたとえ。一目見ただけで、すぐに十行分を読むことができる意から。▽「一目」は「ひとめ」とも読む。
いちもくりょうぜん【一目瞭然】
一目見ただけで、はっきりとわかるさま。一目で明らかにわかるさま。▽「瞭然」ははっきりしているさま。「瞭」は「了」とも書く。
いちもんいっとう【一問一答】
一つの質問に対して、一つの答えをすること。また、質問と答えを繰り返すこと。質疑応答や問題集などの一つの形式。
いちもんはんせん【一文半銭】
ごくわずかの金銭のたとえ。▽「文」「銭」は昔の小銭の単位。「半銭」は「きなか」と読むことがある。「少しの金も…しない」という意で、金惜しみするときに用いられることが多い。
いちもんふち【一文不知】
文字を1字も読み書きできないこと。「—のやつがれなれば」〈滑・膝栗毛・発端〉
いちもんふつう【一文不通】
一つの文字も読み書きができないこと。一つの文字すら通じわかっていない意から。▽「文」は文字の意。
いちやじっき【一夜十起】
人間は多かれ少なかれ私情や私心に左右され、私心をすべて捨て去ることが難しいことのたとえ。▽「一夜」は一晩、「十起」は十回起きること。「一夜いちやに十とたび起おく」と訓読する。
いちゅうのひと【意中之人】
心の中で(恋人や結婚相手として)ひそかに思いを寄せている人。また、心の中で適任者として候補にあげている人。
いちようちしゅう【一葉知秋】
わずかな前兆や現象から、事の大勢や本質、また、物事の衰亡を察知すること。一枚の葉が落ちたのを見て、秋が来たことに気づく意から。▽「一葉」は一枚の葉、一枚の葉が落ちること。「知秋」は秋の来たのに気づく意。一般に「一葉いちよう秋あきを知しる」と訓読を用いる。
いちようらいふく【一陽来復】
冬が終わり春が来ること。新年が来ること。また、悪いことが続いた後で幸運に向かうこと。陰の気がきわまって陽の気にかえる意から。▽もと易えきの語。陰暦十月は坤こんの卦かにあたり、十一月は復の卦にあたり、陰ばかりの中に陽が戻って来たことになる。「復」は陰暦十一月、また、冬至のこと。
いちりいちがい【一利一害】
よいことがある一方、悪いこともあること。利益の反面、害もあること。
いちりゅうまんばい【一粒万倍】
一粒の種子をまけば、実って万倍もの収穫を得ることができる意から、わずかなものから多くの利益があがるたとえ。また、わずかなものでも粗末にしてはいけないという戒め。また、一つの善行が多くのよい結果をもたらすたとえ。▽「稲」の異名。
いちるせんきん【一縷千鈞】
一本の細い糸で、千鈞もの重量を吊るす意から、きわめて危険であることのたとえ。
いちれんたくしょう【一蓮托生】
よい行いをした者は極楽浄土に往生して、同じ蓮はすの花の上に身を託し生まれ変わること。転じて、事の善悪にかかわらず仲間として行動や運命をともにすること。▽もと仏教語。「托」は、よりどころとする、身をよせる意。「託」とも書く。
いちろうえいいつ【一労永逸】
一度苦労すれば、その後長くその恩恵を被り、安楽な生活を送ることができること。また、ほんの少しの苦労で、多くの安楽が得られること。▽「一労」は一度の苦労、少しの苦労。「永」は長くの意。「逸」は安楽・利益の意。「一ひとたび労ろうして永ながく逸やすんず」と訓読する。出典では「一労久逸」とある。
いちろくしょうぶ【一六勝負】
サイコロの目に一が出るか六が出るかで勝負を争うばくちのこと。転じて、のるか反るか、運まかせの冒険。
いちろじゅんぷう【一路順風】
船が追い風に帆をあげてひたすら進むようにという意で、道中の無事を祈って旅立つ人にかけることば。また、物事が順調に運ぶさま。
いちろへいあん【一路平安】
旅立つ人の道中の無事を祈っていう語。「道中ご無事で」の意。▽「平安」は無事で穏やかなこと。平穏無事なこと。