1 種子植物の有性生殖を行う器官。葉から変形した萼 (がく) ・花びら・雄しべ・雌しべおよび花軸からなる。この要素の有無により完全花と不完全花に、雄しべ・雌しべの有無により両性花と単性花に分けられる。受精して実を結び、種子を生じる。「―がほころぶ」「―がしぼむ」
2 花をもつ植物。また、美の代表としてこれをいう語。「―を植える」「蝶よ―よと育てる」
4 2のうち、神仏に供えるもの。枝葉だけの場合もある。「手向 (たむ) けの―」
5 造花。また、散華 (さんげ) に用いる紙製の蓮の花びら。
7 花が咲くこと。また、その時期。多く、桜についていう。「―の便り」「―曇り」
8 見かけを1にたとえていう語。「氷の―」「波の―」
9 1の特徴になぞらえていう語。
㋐華やかできらびやかなもの。「社交界の―」
㋑中でも特に代表的で華やかなもの。「火事と喧嘩 (けんか) は江戸の―」「大会の―ともいうべき種目」
㋒《華やかで目立つところから》功名。誉れ。「後輩に―を譲る」
㋓最もよい時期。また、盛んな事柄や、その時節。「独身時代が―だった」「今が―の俳優」
㋔実質を伴わず、体裁ばかりよいこと。また、そのもの。「―多ければ実少なし」
10 1に関わるもの。
㋐花札 (はなふだ) 。「―を引く」
㋑心付け。祝儀。「―をはずむ」
11 世阿弥の能楽論で、演技・演奏が観客の感動を呼び起こす状態。また、その魅力。
12 連歌で、花の定座。また、花の句。
13 和歌・連歌・俳諧で、表現技巧や詞の華麗さ。内容の意の実 (じつ) に対していう。
14 《他に先がけて咲くところから》梅の花。
「今のごと心を常に思へらば先づ咲く―の地 (つち) に落ちめやも」〈万・一六五三〉
15 花見。特に、桜の花にいう。
「尋ね来て―に暮らせる木の間より待つとしもなき山の端の月」〈新古今・春上〉
16 誠実さのない、あだな人の心のたとえ。
「色見えで移ろふものは世の中の人の心の―にぞありける」〈古今・恋五〉
18 華やかなさかりの若い男女。また、美女。転じて、遊女。
「―に遊ばば、祇園あたりの色揃へ」〈浄・忠臣蔵〉
19 「花籤 (はなくじ) 」に同じ。