むいしぜん【無為自然】
人の手を加えないで、何もせずあるがままにまかせること。▽老子や荘子そうしの思想を指す言葉。「無為」は何もせず、人の手を加えないこと。「自然」は人間の手が加わっていないもともとの姿の意。あるがまま。
むいとしょく【無為徒食】
何もしないで、ただ無駄に毎日を過ごすこと。意味もなく時間を費やすこと。▽「無為」は何もせず、人の手を用いないこと。「徒食」は働くこともせず、無駄に日を送ること。
むいむかん【無位無官】
位階・官職がないこと。また、その人。▽「位」は身分・くらい、「官」は国
むいむかん【無位無冠】
何の位くらいもないこと。重要な役職や地位についていないこと。
むいむさく【無為無策】
なんの対策も方法もたてられず、ただ腕をこまねいていること。計画が何もないこと。▽「無為」は何もせず、人の手を用いないこと。「無策」は起こった事態に対して、効果的な対策や方法がとれないこと。
むいむのう【無為無能】
意義のあることをやりもしないし、できもしないこと。何もできないこと。行うこともやり遂げる力もないということ。へりくだるときにも用いられる。▽「為」は行うこと、行為。「能」は物事をやり遂げる力。
むかゆうきょう【無何有郷】
「むかう(無何有)の郷(さと)」に同じ。
むがくもんもう【無学文盲】
学問や知識を身につけておらず、字が読めないこと。また、その人。▽「無学」は学問・知識がないこと。「文盲」は文字が読めない意。
むがむしん【無我無心】
我欲やよこしまなところのない純粋な心。「—の小児の時から」〈独歩・牛肉と馬鈴薯〉
むがむちゅう【無我夢中】
ある事にすっかり心を奪われて、我を忘れてしまうさま。▽「無我」はもと仏教語。自分に捕らわれる心を超越した心。そこから自分を忘れる意。「夢中」は物事にすっかり熱中して、他のことを考えられない状態。
むけんじごく【無間地獄】
大悪を犯した者が、死後絶えることのない極限の苦しみを受ける地獄。仏教でいわれている八大地獄の八番目。▽仏教語。八大地獄とは、仏教で説かれているさまざまな地獄の中でも最も有名な八つの地獄のこと。等活とうかつ黒縄こくじょう衆合しゅごう叫喚きょうかん大叫喚・焦熱しょうねつ大焦熱・無間の八つをいう。「無間」は間断のないこと。「間」は「げん」とも読む。
むけんならく【無間奈落】
「無間地獄」に同じ。
むげいたいしょく【無芸大食】
特技や取り柄がないにもかかわらず、食べることだけは人並みであること。また、そのような人をさげすんでいう語。自分のことを謙遜けんそんしていう場合にも用いられる。▽「無芸」は芸や特技を何も身につけていないこと。「大食」はたくさん食べる人。大食い。
むげんほうよう【夢幻泡影】
人生や世の中の物事は実体がなく、非常にはかないことのたとえ。▽仏教語。「夢ゆめ」「幻まぼろし」「泡あわ」「影かげ」はいずれも壊れやすく、はかないもののたとえ。「影」は「えい」とも読む。
むこくのたみ【無告之民】
救いを求めて訴えることができない人々のこと。また、頼る者のない天涯孤独な人。貧者、老人、身寄りのない子、夫を亡くした女性などの弱者。
むこのたみ【無辜之民】
何の罪もないのに被害を受けた人々のこと。
むざんむき【無慙無愧】
悪事を働いても、それを恥じることなく平気でいること。▽仏教語。「無慙」は自分の犯した罪を、仏の教えを破りながらもそれを恥じない心。「無愧」は自分の罪を他人に対して恥じない心のこと。「慙はじること無なく愧はじること無なし」と訓読する。「慙」は「残」とも書く。
むしこうごう【無始曠劫】
始めがわからないほどの遠い過去。「妻子といふものが、—よりこのかた生死に流転するきづななるがゆゑに」〈平家・一〇〉
むしむじゅう【無始無終】
始めも終わりもなく、限りなく続いていること。生ある者があの世からこの世へと生まれ、苦しみを味わい、再び死んであの世へ戻っていくという輪廻りんねが無限であること。▽仏教語。「始終」を分けて、それぞれに「無ない」をつけた語。「始はじめ無なく終おわり無なし」と訓読する。「終」は「しゅう」とも読む。
むしむへん【無私無偏】
個人的な利益や名誉を優先せず、公平に判断・行動するさま。▽「私」は自分勝手に物事を行うこと。「偏」は判断が偏っている意。
むしゃしゅぎょう【武者修行】
武士が武芸の修行のために諸国を旅して回ること。転じて、他の土地や外国に行って、技術や芸術などの腕を磨くこと。
むしょくとうめい【無色透明】
色がついていないで、すきとおっていること。また、そのさま。転じて、くもりがなく明らかなこと。意見などが偏っていないこと。
むじゅんどうちゃく【矛盾撞着】
二つの事柄が論理的に食い違って、つじつまが合わないこと。▽「矛盾」は同一人物の言動が一貫していないこと。食い違っていること。「撞着」も「矛盾」と同義。「盾」は「楯」、「着」は「著」とも書く。「矛盾」については「中国戦国時代、楚そ国で矛ほこと盾たてを売っていた商人が、矛を売るときには、この矛はどんな堅固な盾も突き破るほど鋭いと言い、盾を売るときにはこの盾はどんな鋭利な矛でも破れないと言ったところ、聞いていた人に、それではその矛でその盾を突いたらいったいどうなるのかと聞かれ、商人は返答に困った」という故事(『韓非子かんぴし』難なん一)がある。
むじょうじんそく【無常迅速】
現世の物事の移り変わりがきわめて速く、むなしいものであるさま。転じて、人の一生は短く、死期が思い掛けず早く訪れることのたとえ。▽仏教語。「無常」はあらゆるものは生死を繰り返し、永久不変のものは一切ないということ。「迅速」はきわめて素早いさま。
むせいむしゅう【無声無臭】
声も聞こえなければ、においもない意。転じて、人にその存在が知られないこと。人目につかないこと。また、事の影響がないこと。
むそうむねん【無想無念】
仏語。あらゆる想念を離れること。妄念のないこと。無念無想。
むだほうべん【無駄方便】
とても役に立たないだろうと思えるものでも、時によっては何らかの役に立つこともあるということ。▽「無駄」は価値がない、役に立たない意。「方便」は目的を達成するための状況に応じた手段の意。
むだんしゃくよう【無断借用】
持ち主に断らないで勝手に借りて使うこと。
むちもうまい【無知蒙昧】
知恵や学問がなく、愚かなさま。▽「無知」は知識がないこと。何も知らないこと。「蒙昧」は物事の道理をよく知らない意。「昧」は暗い意。「知」は「智」とも書く。
むちもんもう【無知文盲】
学問・知識がなく、文字の読めないこと。また、その人。
むちゃくちゃ【無茶苦茶】
物事の順序が、筋道立っていないさま。また、物事が度を越して激しいさま。▽単に「無茶」ということもある。「苦茶」は「無茶」を強める語。「無茶」も「苦茶」ももともとあった音に漢字を当てたもの。
むちゅうせつむ【夢中説夢】
絶対にありえないこと。実体のない、はかないこと。
むてかつりゅう【無手勝流】
戦わずに、策略で相手に勝つこと。また、その方法。また、師伝によらず、自分で勝手にきめた流儀。自分勝手にやること。また、そのやり方。自己流。無手で勝つ流儀の意から。▽「無手」は手に武器・道具などを持たないこと。剣客塚原卜伝つかはらぼくでんが渡し舟の中で、武者修行者から真剣勝負をいどまれたとき、相手を小洲に上がらせ、自分は上がらずに竿さおで船を突き放し、「戦わず勝つ、これが無手勝流だ」と言って血気の勇を戒めた逸話から。
むにむさん【無二無三】
ただ一つしかなく、それに代わるものがないこと。転じて、一つの物事に心を傾けてそれに打ち込むさま。▽もと仏教語。仏になる道は一乗だけで、ほかに道はないという意から。「三」は「ざん」とも読む。
むねんむそう【無念無想】
一切の邪念から離れて、無我の境地に到達した状態。単に何も考えていないことを指すこともある。▽仏教語。「無念」は雑念を生じる心を捨て無我の境地に至ること。「無想」は心の働きがない意。「無想無念むそうむねん」ともいう。
むびょうしんぎん【無病呻吟】
大したことでもないのに、むやみやたらと騒ぎ立てること。
むびょうそくさい【無病息災】
病気せず、健康であること。元気なこと。▽「無病」は病気にかかっていないこと。「息」はやめる、防ぐ意。「息災」はもとは仏の力によって災害・病気など災いを除く意。転じて、健康で元気なさまをいう。
むみかんそう【無味乾燥】
なんの面白みも味わいもないさま。▽「無味」は味がない、面白みがないこと。「乾燥」は物事に潤いや趣がないこと。
むみょうじょうや【無明長夜】
根本的な聡明そうめいさに欠けるため、衆生しゅじょうが煩悩にとらわれ、真理を得にくいこと。悟りの境地に達しないこと。このことを、明けることのない長い夜にたとえた。▽仏教語。「無明」は衆生を迷わせる煩悩があるために、物事の真理が見えず、仏道にくらいこと。「長夜」は長い間、長い時間にわたっての意。
むようのよう【無用之用】
一見何の役にも立たないと見えるものが、実は役に立つということ。
むよくてんたん【無欲恬淡】
淡泊で欲がなく、物に執着しないさま。▽「無欲」はあれこれ欲しがらないこと。「恬淡」はこだわりがなく、あっさりしている意。「欲」は「慾」また、「淡」は「澹」「憺」とも書く。
むらいのりょう【夢賚之良】
夢の中で賜った良臣。
むりおうじょう【無理往生】
無理に自分の言動を押しつけ、承知させること。▽「無理」は強引に物事を行うこと。「往生」は、本来は「圧状」と書く。「圧状」は人を脅して、むりやり書かせた文書のこと。
むりおうじょう【無理圧状】
[名・形動]強引に押しつけて、自分の意見に従わせること。「愚父(おやじ)が貰って置いたと云って—に婚礼さしたのです」〈魯庵・社会百面相〉
むりさんだん【無理算段】
苦しいやりくりをして、物事や金銭の都合をつけること。▽「無理」は困難を承知で強引に物事を行うこと。「算段」は方法を工夫すること。特に金銭の場合に用いる。
むりなんだい【無理難題】
理屈に合わない無理な注文。実現がとうてい不可能な要求。簡単に解決するのが難しい問題。▽「無理」は理由が立たないこと。道理が立たないこと。「難題」は簡単に解決できない問題、言い掛かりの意。
むりひどう【無理非道】
道理や人の道にはずれていること。道理に合わないこと。▽「無理」「非道」はともに人の道に反し、道理や人情を欠いていること。
むりむたい【無理無体】
相手の考えなどかまわず、強引に物事を行うさま。▽「無理」は道理の通らないこと。困難を承知で強引にやること。「無体」も道理をわきまえず、強引に物事を行うこと。無法。
むりょうむへん【無量無辺】
限りないほど広々としていること。また、物事の程度や数量、分量などが計り知れないこと。