[助動][(せ・け)|○|き|し|しか|○]活用語の連用形に付く。ただし終止形はカ変動詞には付かず、連体形・已然形は、カ変動詞の未然形・連用形、サ変動詞の未然形に付く。話し手または書き手の
過去の直接経験を回想的に表す。…た。…たなあ。
- 「頼め来し人をまつちの山風にさ夜更けしかば月も入りにき」〈新古今・雑上〉
[補説]未然形の「せ」「け」は
上代に「せば」「けば」「けく」の形で用いられ、「せば」は中古の
和歌にも見られる。「け」「き」はカ変動詞から、「せ」「し」「しか」はサ変動詞から出たものという。カ変連用形からの接続形「きし」「きしか」という形が見られるのは中古からであるが、「きし」は「きし方 (かた) 」だけ、「きしか」は「着しか」の掛け詞としたものだけであるところから、「きし」を
動詞「く(来)」の連用形に、完了の助動詞「ぬ」の連用形、
過去の助動詞「き」の連体形の付いた「きにし」の音変化「きんし(じ)」の撥音無表記であるとして、カ変動詞の連用形からの
接続を認めないという説もある。同じ
過去の助動詞「けり」が
伝承した
過去を
回想するのに対し、「き」は
確実な
過去の
事実を
回想する。→
ありき